びっくり味噌カツ

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 名古屋のMホテルで朝食ビュッフェ。
 フレンチトーストにホットケーキ、ママレードを塗った黒糖パンのトースト、ボリュームたっぷりのオムレツ(その場で焼いてくれる)、ウインナー、ブルーチーズをたっぷり乗せたグリーンサラダ、ブルーベリーヨーグルト、バナナ(まるごと1本)、すいか、グレープフルーツ、プルーン(特大3個)、オレンジジュース、そして締めにマフィンとホットコーヒー。
 高貴な味に大満足し、ホテルを出る。
 足取りは重い。当然である。おなかがはちきれそうだからである。
 そのまま近鉄特急に乗る。
 通路をはさんだ左隣に、頭の薄くなりかけたサラリーマンがいる。やおら袋をガサガサやっていたかと思うと、中から弁当を取り出した。
「びっくり味噌カツ」
 蓋を開けると同時に、濃厚すぎる味噌カツのにおいが車内にぷうんと立ちこめた。
 カツと言えば、つい先日、私はカツ重で生き地獄を味わったばかりである。
 男性は特大のカツをゆっくり箸でちぎり、少しずつ愛しむように食べている。私は物思いにふけるふりをして肘掛けに肘を乗せ、そっと手のひらで鼻の穴を抑えた。
 カツの呪いは恐ろしい。どのくらい恐ろしいかというと、Mホテルの宿泊料金より恐ろしい。

2009.08.09