午未天中殺のみなさんへ その1

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 全国の午未(うまひつじ)天中殺のみなさんこんにちは。
 
 ああさすが午未天中殺の方々は乗船がお早い。みなさんおだやかなお顔をされてすでにミーティングルームに着席されていらっしゃいますね。「6つの天中殺グループの中で潔さナンバーワン」「理性の人」「市井(しせい)の悟り人(びと)」と称されるだけのことはあります。
 最後までいやだ帰るとだだをこねる辰巳天中殺、勝手にパラシュートをつけて飛び降りようとする申酉天中殺のみなさんとは違います。

 はい、ようこそ宇宙船午未号へ。
 これから2年間、みなさんにはこの船で「天中殺」という名の大宇宙の旅をお楽しみいただくことになっております。わたくしの後ろにずらりと並んでおりますのはみなさまの旅のおともを務めさせていただきますキャビンアテンダント、そしてわたくしがチーフキャビンアテンダントの午(うま)・未(ひつじ)です。どうぞよろしくお願いいたします(一同礼)。
 旅の途中でご要望やご不明点などありましたら、どうぞご遠慮なくわたくしたちにお声をおかけください。

 さて、宇宙を旅している最中はいつもと同じようにお過ごしいただいてかまいませんが、少しだけ注意事項がございます。
 ご存じのように宇宙は無重力の世界ですので、身体の自由がききません。あちらに行きたいと思ってもなかなか思い通りに進めませんし、逆に止まりたい、休みたいと思ってもいったん加速がつくとブレーキが効きません。
 また、ここは根性を出して踏ん張りたい! と強く望まれても宇宙空間には地面がないので足腰に力が入りませんし、押して押して押しまくれば道が開けるはずだ! と頑張ってものれんに腕押しとなり、深い無力感を覚えることになります。
 重力のある地球では簡単にできたこと、少し無理をすれば可能になったことが、宇宙では難しくなるということをあらかじめご了承くださいませ。
 
 みなさんのお姿は今までとまったく変わらず地球上に投影されますが、実体はこの船の中にあります。ですので家族や恋人やお仲間と一緒にいても、まるでエア牢獄に閉じ込められているかのような孤立感、あるいは世界の真ん中で不安を叫びたくなるような孤独感を覚えることがときにあるかと存じます。
 そのようなときはむりにご自分の存在感をアピールしようともがくより、ただ静かに受け身の姿勢で「なるようになるさ」とシャンソンもしくはR&Bのリズムに身をゆだね、成り行きに任せることをお勧めいたします。
 
 航行中、ときにビジネスがうまくいかなくなったり、対人面や恋愛面でストレスを感じたり、人によっては体調が不安定になってどん詰まり感を覚えることもございますが、「今までの生き方を見つめ直すいい機会」「軌道修正のチャンス」「神さまがくれた人生の作戦タイム」と割り切られ、いたずらに嘆いたり悲嘆に暮れたりなさらないようお願いいたします。
 試練が大きければ大きいほど「どこまで自分を鍛えられるか、神さまから期待されている」とお考えになってください。
 ちなみに運命学では、「12年に一度、2年間の天中殺が巡ってくるのは神さまの愛」と申します。星飛雄馬も強力なバネ製の養成ギプスをつけて天下の魔球・大リーグボールを編み出しました。

 はい、挙手されたのは午未・六白金星の山田さんですね何でしょう。
 していいことといけないことをざっと教えてください、ですね。
 的を射たいい質問ですね、さすが思慮深い午未天中殺です。
 していいことは「人にやさしく親切にする」「学んで知識や技術を身につける」「いらないものを処分する」などです。
 やらないほうがいいことは「欲や利益を優先させる」「人を押しのける」「結婚や家の新築など大きなイベントをゴリ押しする」などです。無理にイベントを決行しますと契約時にミスしたり、小さなミスが大ごとに発展したり、優子ってこんな性格だったのかと頭を抱えるなど、何かと裏目に出やすくなります。
 基本的な判断基準として「手放す」は吉、「かき込む」が凶。それをするときの目的が「自分さえよければ」の欲得でなければOKです。

 はい、ではそちらの窓ぎわの方。午未・九紫火星の藤岡さんですね。
 いつ地球に帰れますか、ですか。これもいい質問です。
 地球帰還は2016年2月3日を予定しております。ちなみに翌4日の立春から、申酉天中殺の方々がみなさんに代わってご乗船されます。

 あとは・・・・・・ありませんね。
 このようにむだなくさくさくミーティングが進行できますのは、みなさんが賢くて物わかりのいい午未天中殺だからです。いついかなるときも状況を鋭く観察され、安易に他人を頼らず、あせらず静かに流れに身を任せていらっしゃる。
 誰ですか、「その落ち着きぶり、動じなさぶりは鈍牛(どんぎゅう)ならぬ鈍馬(どんば)ですね」なんてひどいことを言うのは!
 あっ辰巳天中殺の小池さんじゃないですか!
 いけませんよ、あなたは2014年2月3日の節分で宇宙旅行が終わったんですから。早くお降りください、えっ居心地がいいからまだもうちょっと乗っていたい? ここはここで楽ちんなんだもん? ダメですよ何言ってるんですか、あなたは娑婆でやることがあるでしょう。(無理やりハッチから押し出す。)

 ふう・・・・・・。失礼いたしました、たまにこういうことがございます。
 それではみなさん、本船は間もなく離陸いたします。シートベルトを・・・・・・そうだ、大事なことをひとつ申し忘れておりました。
「午未天中殺に限り、天中殺時の災いはそれほど過酷なものにはならない」という運命学のルールがございます。
 みなさんは一家や一族や所属するグループのまとめ役として、最後まで走り抜かねばならないお役目があるからです。「午未は長い道のりを淡々と冷静に完走せねばならない責任を担っているから、天中殺期間もなるべく道を平坦にしてやろう」という天の配慮と申せましょう。大宇宙は実に奥が深いです。

 ・・・・・・窓の外ではしんしんと雪が降り積もってまいりました。旅立ちの日にふさわしい、凛とした美しい眺めです。 
 それではどなたさまもシートベルトを今一度確認され、肩の力を抜いてお気を楽になさいますように。そして、これから始まります快適な空の旅をお楽しみください。Good Luck、Thank You。