髪質

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 せめて耳の下くらいまでは髪を伸ばし、フェミニンなボブにしようと固く決意したものの、2カ月目にして頓挫。くせっ毛仲間ならおわかりと思うが、湿気の多い梅雨時はぼわんと髪がふくらむのである。
「そうだ、ブラッシングしよう。たんねんにブラッシングすればまっすぐ髪が伸びてサラサラになるのではないか」と期待するも、くせっ毛なので毛を立てたら立ちっぱなしである。おもしろいので鉄腕アトムやユニコーンなど、次々に創作する。
 どうして自分の髪は風になびくタイプではないのかとしだいに腹が立ってきて、やけを起こしてブラシで毛を立てまくったら完ぺきなアフロスタイルになった。
 以前の私なら、その場で迷うことなく縮毛矯正をかけに行ったことだろう。しかし髪の組成を組み替えてむりやりまっすぐ伸ばす縮毛矯正は髪にものすごいダメージがかかるうえ、「これは本当の自分ではない」という違和感が常につきまとい、気持ちに負荷がかかるのである。
 本来はくるくる巻きたくて巻いているものを薬剤や熱によって強制的に伸ばすのは、髪にとっては屈辱であり、ひいては自分自身を否定することにつながるのではないか。
 これは、過去に何十回も矯正しまくってきた私の正直な感想である。 

「髪は性格をあらわす」という説があるが、実際にさらさらでまっすぐな髪の持ち主は性格も素直だし、くせっ毛の持ち主はあまり人の言うことを聞かない傾向があるように思う。悪くいえばクセがある、よく言えば個性的でマイペース。
 でも本当はまっすぐでもくせっ毛でもどちらでもいい、持って生まれたものなのだから仕方ない。たまにパーマをかけていつもと違う自分を楽しむのはいいが、ずっとかけ続けていると「地の自分」が押さえつけられ、本来の個性が発揮できない気がする。はちかつぎ姫のようである。
 なので、私は今は天然のままである。しかし、このままではアフロなモンチッチである。さらに伸ばすとゴーゴンになるのは経験済みである。
 で、どうしたか。美容院へ行き、こう言った。
「あのう、髪を伸ばすのをやめました。ベリーショートにしてください」
「えっ! お客さん、伸ばすって言うから大事に大事にカットしてきたのに」
「はあ、でも頭がぼわんとまるーくなるもんですから」
「今がガマンのしどころなんですよ、これを乗り越えれば収まりがよくなるのになあ」
 せっかく伸びてきたのにもったいないなあ、ワックス使えば多少は収まるんだけどなあと美容院のお兄ちゃんは残念がるが、客のオーダーなので仕方ない。しゃきしゃきいさぎよくハサミをさばいていく。
「できましたよ」
 ミア・ファローの復活だ。そこら辺のメンズより短いだろう。これで、アフロからは脱却できた。
「お客さん、やっぱりベリーショート似合いますねえ」
 たぶん私はこれから生涯ロングヘアーとは縁のない人生を送るだろうなと確信。いや別に悲しくなんかない。

2010.06.21