同窓会

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 幼なじみ4人で同窓会。毎年会っているので「うわあこんなになっちゃって」という驚きは一切なく、「元気だった?」程度の軽い再会である。
 待ち合わせは新宿御苑。
 1人が電車のアクシデントで遅れるというので、3人で庭園内のベンチに座って待つ。秋の空は高い。
 視線を降ろすと黄金に色づき始めた木々を写生する老婦人、赤い薔薇のそばにぼんやりたたずむ青年、仲よく手をつなぐ若いカップル。芝生で寝そべる男のそばでは、ベレー帽をかぶった園児の集団が弁当を広げている。
 日々是好日。 
 晴れた昼間とはいえ、立冬を2週間過ぎた風は冷たい。
 人差し指の側面で鼻水をぬぐっていると「で? あなたは最近いかがですか」と話をふられる。
「ええ、私はいま地上を離れ、暗黒の宇宙空間をたった1人でふわふわさまよっているような状態です」と本当のことは言わずに「ま、ぼちぼちですわ」と答える。
 ほう、と幼なじみが遠くを見ながら口を開く。
「わたくし手術をしましてね、最近では大手術をしてもじっと寝かせておいてくれないのですね、もう翌日から体力回復とリハビリのためにどんどん歩けと医者が言うのです。おなかからチューブを何本も垂らしつつ点滴スタンドをガラガラ押して病院内を歩き回っているとき、まるで自分がキャプテンEOに出てくる女王様になったような気がいたしました」
 人差し指を突き出しながらこわい顔でファイアー! とかネイティブ英語をキメてひとりで遊んでいたのでしょう、と別の幼なじみが微笑み、で、わたくしはと続ける。
「先日父が亡くなりましてお墓を作ったのですが、最近は○○家の墓とか先祖代々の墓とかではなく、好きな言葉を刻むのですね、和とか愛とか祈とか。そうすることで戸籍上の名前を気にすることなく、好きな人と一緒にお墓に入れる。21世紀のお墓は自由度が高まっているのですね」
 地獄上等とか夜露死苦とか刻んだら受けるだろうかとバカなことを考えながらティッシュを取り出し鼻をズビズバかんでいると最後の1人がやってきた。
「腹が減ったから庭園散策はやめてランチにしようぜ」と全員一致、近くのイタリアンへ。

 ストーブつきのオープンテラスの4人テーブルが運よく空いていたので、そこに陣取る。まずはシャンペンで乾杯。
「これおいしいっ」と口々に叫びながらパスタやピザをたらふくつまみ、「兄ちゃん、もう1杯持ってきてんか」とみんなでワインをおかわりする。
 ああ3杯目に手を伸ばしてしまっていいものだろうか、いいに決まっていると即断即決して結局1人につきシャンペン1杯と赤ワイン(大盛)2杯を飲み干す。
 4人でグラス合計12杯(大盛)の酒をたいらげ、ああ酔っぱらった、いい気分だからついでに酉の市でもなめてくかとよれた足取りで神社に立ち寄り、二礼二拍手一礼。
 自分だけおみくじを引いて「ここは大吉出ないんだよね-」と言いながらクルクル広げてみると43番大吉。図に乗ってA、B、C全員に見せびらかす。
 酔った勢いで映画DVDと音楽CDを山ほどレンタルし、帰宅後に新作ホラー映画を一気に2本見る。
 映画に悪酔いしたのかそれともワインに悪酔いしたのかそのうちに頭痛が始まり、あわてて鎮痛薬を飲んだ。
 やがて薬が効き始め、疲れたからもう寝てやれと布団にもぐり込み、面倒なことは何もかも置き去って一途に眠りの世界へ駆け込んだ。

2010.11.21